【塗装業者が話さない】スレート屋根塗装のデメリット
2022.02.24
コラム
1.化粧スレート屋根とは
化粧スレートとは現在でも多くの建物の屋根に採用されているセメントに繊維骨材を混ぜた厚み5〜6㎜の板状に塗装を施した屋根材で『カラーベスト』と呼ばれ「コロニアル」(ケイミュー株式会社)が代表的な商品です。
製造時期によってはアスベストを含む製品があり、リフォーム時の解体や撤去には法的規制が有りますので注意が必要です。
→ケイミュー製品のアスベスト含有情報はこちら
2.化粧スレート屋根の寿命とメンテナンス
化粧スレート本体は製造時期や製品の厚み、アスベストの有無、表面塗装などにより耐候年数に差はありますが、塗装などのメンテナンスを行った場合には20〜30年が寿命と言われています。
近年のノンアスベスト製品は昔に比べやはり強度や耐候性は低下しているため、早い時期からひび割れなどを生じる製品も少なくありません。
メンテナンス方法には塗装のほか、金属製の軽量屋根材を被せ葺きするカバー改修(カバー工法)などが最近人気となっています。化粧スレートの状態によりメンテナンス方法を選ぶ必要があります。
3.化粧スレート屋根塗装のデメリット
化粧スレートのメンテナンスで最もポピュラーなメニューは「屋根塗装」です。化粧スレートは元々がセメントの薄い板に塗装を施した屋根材ですから、塗装とは相性が良いのかも知れません。
しかし化粧スレートの「屋根塗装」には大きなリスクを伴います。そのリスクとは…雨漏りです。
化粧スレート本体には瓦や金属屋根材のように水返しや排水溝が無いため、単体での排水機能はほぼありません。(水下へスムーズに排水を促す模様のある製品はあります)
素材の性質上、谷形状を作ることも困難である為、本体を複数枚重ね合わせることにより排水しています。
ではなぜ「屋根塗装」をすることで雨漏りのリスクが高まるのか。それは、重なり合った化粧スレートの上から塗装をすると化粧スレートの本体同士の隙間や上下に合わさる小口の部分を塗料で塞いでしまうため雨水の出口がなくなり、内部に溜まった雨水が毛細管現象により上昇し釘穴等から漏水してしまいます。
とは言え初回の外装リフォームは出来る限り予算を抑えたい!と言う方にとっては「屋根塗装」を選択するケースも多いのも事実です。その時には塗料による化粧スレートの密着を防ぐ「タスペーサー」と言うパッキン材を使用することをお勧めします。
他にも「縁切り」と呼ばれる工具を使って塗料によって密着してしまった化粧スレート同士を剥がす方法もありますが、せっかく屋根塗装によって綺麗に仕上がった塗膜や化粧スレート本体を傷付けないよう腕の良い職人さんに仕事を依頼しなければいけません。
4.塗装してはいけない化粧スレート屋根とは
実は化粧スレートには「塗装をしてはいけない」製品があります。
それは塗装出来ないのではなく、塗装をしても強度や製品の品質の問題により、せっかくの塗装が無駄になってしまう可能性があるからです。
「塗装をしてはいけない」代表的な製品は下記の通りです。
【パミール/ニチハ】*廃番
製品の品質に問題があり本体がウェハース状に剥離をしたりクラックが入る症状が見られ、屋根材としての機能や強度を維持出来ないためです。
見た目にもとても悲惨な状態になっていますので、さすがに塗装を勧める塗装業者も少ないと思います。併せて、パミールには「釘問題」が深刻で、メーカー支給品の本体固定用釘の頭が錆により取れてしまうと言う信じ難いことが起きました。釘頭が取れたらどうなるか想像が付くと思いますが、強風によってパミール本体が飛ばされてしまうんです。怖いですね。
こうした情報を知らない塗装業者がいたら…。
きっと塗装を勧めてきますのでご注意ください。
【ナチュール/大建工業】*廃番
製品の表面に無数のクラックが入る、自然に割れるなど強度的に問題があり、塗装後に台風などの強風で本体の一部が飛散する危険性があります。
また発売当初は耐候性(色持ち)が高いと拡販されましたが、10年に満たない時期に褪色してしまいメーカー保証で屋根塗装対応したハウスメーカーもありました。
パッと見は判断しづらい症状ですから、ナチュールの場合は必ず屋根の専門家に診断してもらってください。
【アーバニー/旧クボタ(ケイミュー)】
【アルデージュ/旧ナショナル(ケイミュー)】
これらは本体にスリットがあるデザイン性の高い製品です。製品自体の品質に問題があると言うよりは、そのスリットにより本体の強度が低下している点です。
化粧スレートは専用釘で留め付けしますが、施工時にその専用釘が適切に打ち込まれていない(釘頭が浮いている)と屋根塗装などのメンテナンス時に屋根を歩き浮いた釘の部分に荷重がかかることで本体が割れることがあります。
塗装工事中に数枚割れてしまった、と言うトラブルは良くある話です。
また、スリットが深い形状から雨水が本体の裏側に回りやすいため塗装による雨漏りリスクが高まったり、強度の問題でタスペーサーなどのパッキン材を取付けられないケースもあり、当店では塗装をオススメしておりません。
【ノンアスベスト化粧スレート/ケイミュー】
先にも書きましたが、アスベスト規制により化粧スレートの骨材にアスベストを使用しなくなった製品はやはり強度の低下が否めないため、その後発売された化粧スレートには割れ、クラック、反りなどのトラブルが多く、塗装をする場合には事前に必ず屋根の専門家による診断を受けことをオススメします。
以上、塗装をしてはいけない化粧スレートについて書きましたが、塗装専門業者によっては「塗れるので大丈夫!」と塗装を推してくる場合もあります。しかしそれは塗装可能であって、塗装が望ましいと言うことではありません。
塗装は出来ないとアドバイスをしてくれる良心的な業者もいれば、そうではない自己都合で塗装を強く勧めてくる業者もいるので、冷静に判断をすることが大切です。
5.化粧スレートのお勧めメンテナンス方法
化粧スレートのメンテナンスは段階的に行ないましょう。10〜15年目に優良な塗装業者にて高耐候屋根塗料で塗装することが大切です。
また15〜20年以上メンテナンスをせず放置した場合、塗膜の劣化により化粧スレートの吸水率が高まり、吸水と乾燥を繰り返しているうちに反りや割れが発生し、次回メンテナンスは葺き替えをしなければならない状態になる場合がありますのでご注意下さい。
屋根塗装の寿命は外壁塗装に比較してかなり短くなります。紫外線や太陽熱、風雨によるダメージは外壁とは比較にならないほど受けます。
屋根用塗料も無機やフッ素など耐候性の高い塗料を選ばないと5〜6年で褪色してしまいます。
シリコン屋根塗料で10年保証をしている業者は要注意です。
(10年保証については多くの塗装業者が謳っていますが、本当に保証してくれるか(保証出来るか)はその会社や業者の財務内容や経営方針など調べないと分からないです。)
屋根塗装は1回目が非常に重要で、2回目以降の再塗装に大きく影響します。1回目に高品質な塗装をすることで2回目も質の高い塗装が可能になります。高品質な塗装とは耐候性の高い塗料で適切な施工手順で塗装することです。下地の悪い状態にいくら良い塗料を塗ってもその性能は充分に発揮されないと言うことです。
もし、化粧スレートの劣化が著しかったり1回目の塗膜の浮きや剥がれが目立つ場合には、塗装はせずに屋根材の全面葺き替えもしくは新しい屋根材を被せ葺きするカバー工法をおすすめします。
実際には、化粧スレートの下葺材(防水シート/ルーフィング)の寿命も20〜30年ですから2回目の塗装の場合、雨漏りリスクは多少なりともあります。
いずれにしてもメンテナンスは事前に塗装業者ではなく、屋根の専門家に診断をしてもらうことをお勧めします。